はちみつ茶房
ミエルと申します。イラスト描き。ただいまの目標はフランスでの絵本の出版。一児あり。
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ベテラン歯医者
 ちょっと前から危ないとは思っていたが、差し歯の1本が取れた。
前歯なので格好悪いことこの上ない。一応もとの所に収めれば、何とか落ちずに人と話したりくらいはできる。しかし以前友人と話しながら道路横断中に差し歯を飛ばし、しかも夜だったので必死で探しやっと見つかった、いうことがあったので、やはりすぐにくっつけたい。下手すると就寝中に飲み込むおそれだってあるし。金曜日だったのでその日のうちに直さないと月曜日までこの状態でいなければならない。

 取れたのが朝だったが、その日の仕事が何時頃終えられるか分からない。6時には子供を学校に迎えに行かねばならないし、果たして金曜日中に行けるかどうか。幸い仕事は早めに終わり、メモしておいた歯医者さん何軒かをあたってみた。近所には結構な数の歯科医院があるが、緊急状態を強調するために医院の前に行き「今入り口の所に来ています。くっつけるだけなんです。」と訴えてみたが、やはり金曜日の夕方近くともなるともう本当に予約でいっぱいで、簡単な処置であっても無理とみんな言う。いざとなったらこれも近所にSOS歯科というところがあり、夜遅くまでやっていて大抵はその日に行っても処置してもらえる。2度ほどお世話になったが、緊急料金なので通常の2-3倍して保険も一部しかきかない。

 一軒だけずっと話し中で繋がらなかったところがあったのを思い出した。入り口を見る限りでは何となく寂れた感じがしたしここはまあいいか、と早々に諦めたのだ。白いペンキで塗られた金属製の入口は古びていて歯医者というより家内工業の工房に見えた。もう一度あそこにかけてみるか、もうどこでもいいや、取れたものをくっつけてもらいさえすれば。今度は電話が通じたがひどく不機嫌そうなの女性声が答えた。その声は半分つぶれた感じでそれはとうてい歯科医とは思えなかったので間違ったかと思った。
「はっ・・歯医者さんですか?」
「そうだけど、誰よ?」
攻撃的な感じにも聞こえる。やさぐれた感じの60前後の女の人を勝手に想像していた。なんかここ行くのいやだな、どうせ受け付けてもらえないからいいや、と思いつつとりあえず事情を説明する。ところが意外な答えが返ってきた。
「本当はこんな急な予約とか受けないんだけどね、緊急だからやってあげるよ。あんた外国人かい?」
日本人だというとさらに話し方は柔らかくなった。6時に学校に行かねばならないことを告げると、では6時過ぎにお子さんと一緒においで、と言われた。

 さて、歯科医院へ行ってちょっとびっくりした。出てきたのはかなり高齢の女性。単に老けて見えるとかではなく、背中の曲がり具合、その他からどう考えても70代後半、もしかしたら80超えてるかも。やさぐれた感じに聞こえた声は単にしわがれてたのでそう聞こえたのだと言うことが分かった。 
 入り口に劣らず中も古びていた。治療台もかなりの年代物である。失礼とは思いつつ細かいところはちゃんと見えるのだろうか、手元は大丈夫なのかとか心配してしまう。でもまあ、くっつけるだけなら・・。

 歯の根っこの状態、取れた差し歯の内部を見ながら彼女はつぶやく。
「おやまあ、あんまりいい状態じゃないねえ。大体この差し歯の軸、何でこんなに短いんだい、奇妙だこと。こりゃ取れるよ。」
まさか、これはもう使い物にならない作り直し、なんてことにならないだろうか。
「え、ええ、分かってます。かなり前に作ったのでいずれ作り直すつもりですが今すぐは無理なので、とりあえず今回は軸が短くてもいいのでくっつけていただければいいので・・」少し逃げ腰の私であった。
「まあまあ、ちょっと待って。この差し歯、中を掃除しなきゃね。古い接着剤やらセメントやらが埋まってるよ。え?前回のだけじゃないね、これは。なんだい、今までの処置、中掃除せずにそのままくっつけてたのかい?」
「はい、いつもくっつけるまえにシュッと何か吹き付けるだけです。」というと、歯科医は顔をしかめてで首を横に振りながらため息をついた。
「全くひどいもんだね。あとレントゲンを撮って土台の歯が大丈夫かどうか見なきゃならんね。」

 彼女は差し歯の中に残っているセメントなどを丹念に研磨機で削り取り始めた。かなり細かい作業なので私はまだちょっと不安を持って見ている。
レントゲンを確認して言う。
「歯の方は大丈夫みたいだね。軸はどのみち短めだけど、これは埋まってたせいもあるね。こうしてセメント取り除けば大分違うよ。」
長い時間をかけて掃除している間、彼女はいろいろな話をする。近くに住む日本人の女性がよく治療にくること、その人は旦那さんと一緒にお店をやっていること。私もそのお店にたまに行くのでその人の顔は知っている。そして、日本人が通っているということで安心もした。
子供はそろそろしびれを切らし「まだー?」と言っている。

「さ、これで大体きれいになった。次は歯の方だよ。」
え?え?削るんですか?とまた逃げ腰の私である。
「大丈夫、歯を削るんじゃないんだから。中を掃除するだけだよ。」
研磨機や細い器具で丁寧に掃除する。下の歯の所に唾液吸飲のチューブを固定し、コットンを唇の内側に詰め丁寧に見てくれる。しかしその状態で歯医者のおしゃべりは続く。しかもしゃべるだけではなくてこちらに問いかけて来たりする。あがが‥。
それが済むとやっと歯を接着。1時間はかかっただろうか。

 レントゲンを取ったり、処置も丁寧だったのでそれなりに料金がかかるかと思ったら、24ユーロ。いつもより随分安い。こちらは日本と違ってまず全額を払い、あとで払い戻してもらうという形がまだ一般的なので、これが実費だ。歯科も内科その他の科もその診療所によって料金の選って違うのでまちまちだが、普通の保険でカバーされるのは取り決められた一定の額のみだ。
「レントゲン代とか全部込みでですか?」
「そうだよ。SOS歯科とかではどれくらい払ってたの?」
「よく覚えてないけど、50は超えてたと思います。もしかして70くらいだったかも。レントゲンなしでくっつけるだけで。」
「はー、信じられないね。暴利もいいとこだね。」

 というわけで他でよりずっと丁寧に処置してもらえた。最初不安を持ってしまって申し訳なかった。今回治療した差し歯の持ちがよければまた次回ここに来るかな、と思ったが本来ならとっくに定年を過ぎてると思われる彼女、次回また私の差し歯が取れたときも現役なんだろうか。
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【2008/02/27 19:17】 | 生活 | コメント(2) |
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